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早期教育は本当に必要なのか

早期教育は本当に必要なのか

五嶋みどりの母親も後に娘に対して「指導」ではなく「虐待だった」と語るような壮絶なレッスンを繰り返し、母が悲願だった有名なバイオリストになりました。3歳半から徹底的な指導を開始して、まだ幼い子どもでありながらも母は子どもであることを認めず、指の痛みを娘が訴えても練習を続けさせます。うまく演奏できないと、叩いたり蹴ったり・・。4歳楽譜を読み込めるように指導して、子どもでは理解できない解釈も、小説や物語を読み聞かせて感情を分からせるように仕向けます。

生活の全てをバイオリンに集中させるために、みどりには荷物ももたせず、食事も母親が食べさせてあげるという徹底。うまく弾けなかったら、叩いたり蹴ったりするのに生活の全てをバイオリンにするために、人間として当たり前のことはさせない超過保護ぶり。ここまでは子どもに指導はできない。とは思っていても、子どもを早期教育をしたいとおもっている親も多いからこそ、ありとあらゆる教材が溢れています。

早期教育の種類

早期教育というと、まだお腹の中にいる赤ちゃんを対象にした「超早期教育」もあります。「超早期教育」のほかには「小学校に入学するまえの幼児教育」をさすことが多くなっています。この「小学校に入学する前の幼児教育」というのは、小学校に入学する前に文字の読み書き・計算・外国語といった教育を施すことをいいます。

子供にとっては、親の読み聞かせや遊びも教育になっていますが、そのような日常生活の体験を通して自然に覚える文字や数の概念ではなく、市販の教材や幼児教室で暗記して獲得した知識(パターン認知型)を指しています。

早期教育を取り入れる背景

  • 乳幼児の脳の柔軟性・吸収性・許容量が膨大であって、幼児であればあるほどその可能性は無限大。だからこそ、常に知的刺激を与えるなど環境を整えることで、子どもの持つ能力を最大限に引き出したい。早期教育を受けさせなかったことで、後々に他の子と差が出てしまって後悔することはしたくない。
  • 小学校1年生で学習を始めるというのは遅い。1年生というのは、集団生活を開始するのに適した年齢なので、勉強はもっと早くからでもできる。
  • 私立幼稚園や小学校の受験準備のほか、スポーツや音楽でのプロフェッショナルになるためには、早くから始めておく方が圧倒的に有利。周りの家庭が早期教育をしているので、自分の家でも遅れをとってはならない。早期に始めれば音楽でもスポーツでも飲み込みが早い。そして早くすること優秀な成績を収めることもできて、難関試験や検定試験にも合格することができるので、合格が子供の自信につながる。
  • 「三つ子の魂百まで」といわれるように、絶対音感や外国語のネイティブ並みの発音は幼い時期にしか獲得することはできない。その頃までに教育を開始しなければ、伸びるはずだった可能性を失ってしまう。
  • これからの時代を生き残るために不可欠なスキルを身につけさせるため。

早期教育に否定的な意見

早期教育が取りざたされて加熱しているのでは?!とも言われていますが、早期教育を施すのには、年齢は関係ありません。最大の利点は、学校教育とは違って次々に課程を進むのが早期教育の最大の利点になっていますが、特に乳児・幼児・小学校低学年といった小さい子供には無駄でもあり、それどころか弊害があるという説もあります。どんな批判がでているのでしょうか。ちなみに時代は21世紀になっていますが、まだ早期教育は実験段階ということもあって、十分なサンプルを得た科学的な調査結果、長期に渡った研究結果が出ていないのが実情です。

科学的観点からの批判

  • 【右脳を鍛える幼稚園】といった右脳教育の訓練を掲げるところがありますが、右脳論は通俗心理学になっているため科学的根拠は基本的には無いからです。
  • 3歳までに教育を開始しないと手遅れという考え方そのものが、「三歳児神話」の一種になっていて、3歳までの家庭環境が人格を左右するということはない。
  • ドーマン法は、脳障害をもつ人へのリハビリテーションのために開発されたもので、健常児に効果的だとは証明されていない。
  • スズキ・メソードやリトミックなどは、情操教育であり、早期教育のメソッドではない。
  • 早期教育で知能指数(IQ)が高くなると言われている例がありますが、それは知能指数を測定する検査が練習によって成績をあげることができるからでり、知能が実際に伸びることとは別問題です。
  • IQの測定は幼児の場合には、特に教育をすることで訓練した子と訓練を受けていない子との間で差が大きくなりますが、同年齢の子が成長して教育を受けた後の青年期には平均的なIQに落ち着くことが多くなっています。
  • 幼児期で日常会話能力(英語)を習得させようとしても、定着度は低くなっていて、必ずしも質が高い知的な意思疎通能力が獲得できるとは限らない。

親子関係への悪影響になるのでは?という立場での批判

  • (1)子供が本当に早期教育をやりたがっているのでしょうか? 子どもがやりたがらないことを、親が無理にさせる影響はないのでしょうか?という意見。
  • (2)子供は親に愛されたいという願望が強い。子どもは順応性が高いため、早期教育を受けた子供は忠実に言われたことをやり遂げる「いい子」になるが、 この過剰適応が問題になります。幼い時から、子どもは本音を抑えて、親に気に入られることを優先してしまうと、自由な感情表現や欲望のコントロールの訓練をする機会が減ってしまいます。そのため、思春期に達した時や社会に出た時にに、訓練不足の子供がいじめ・不登校・性の問題に直面した時に上手く乗り越えていけるのでしょうか。
  • (3)親子の愛着関係が重要な幼児期に、厳しい訓練や練習を強制されたことで、子どもに情緒障害が起きた事例があります。また、熱心に早期教育を行ったが、子どもが親が期待する通りの結果を出さなかったことで親が情緒的に不安定になる例も多くあります。
  • (4)子供が刺激を受けることで、どんどん学ぶことは大変好ましいことではあるが、そこに「大人の評価」や「親の価値観」が入ってくることが問題。検定試験合格、トロフィーといったことを目標にさせて、子供に無言のプレッシャーを与えているのではないか?過度の期待は、子供のストレスを増大させだけ。親は自分の不安をまぎらわすために、親自身が達成できなかったことを子供に親が果たせなかった代わりをしてもらっているだけではないのでしょうか。競う現場で、自分の子どもが他の子供に「負けた」時が出た時に、親は平常心を保つことはできるのでしょうか。
  • (5)能力主義の欧米とは違って、日本では人の能力は平等だという主義があるため「努力次第で誰でも天才になれる」という考えのもとに、教育をすることで、親が子どもを追い詰めていないだろうか。